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2月
蒸留家のためのブックガイド

February 2019

発酵についての本は世の中にこんなにもたくさんがあるのに、蒸留についての本となると途端に少なくなってしまうのはなぜだろう。発酵にはマジックがあるが、蒸留は単なるテクニックだと思われているからというのが僕の推測で、蒸留にもマジックあるよって言いたい。が、まだまだ言えない。

日本で発行されている蒸留についての本は、ほとんどが焼酎かウィスキーに関しての本で、どうしても飲む側から書かれたものが多い。アイラ島の蒸留所に行きたいだけなんじゃないかという疑惑すらある。あとは創業者の自伝や伝記も一ジャンルとしてあって、もちろん面白いのだけど、読んで夢想する時期はとうに過ぎている。

クリストフは、蒸留に関するほとんどの本は蒸留なんてしたことのないヤツの書いたファンタジーだ、なんて言っていたけど、そうは言ってもこちらは日々わからないことがあり、Youtubeにはアメリカの片田舎のキッチンで蒸留酒作っている人の映像ばかりが増えていく状況では、本に頼るしかない。

今回は蒸留にまつわる本をいくつか紹介します。本のことを書くのは実はけっこう好きなのです。

銘酒誕生 白酒と焼酎 / 小泉武夫(講談社現代新書

製造法にまで踏み込んで書かれたものでやはり外せないのは、日本が誇る発酵博士、小泉武夫先生の本。蒸留についても焼酎や泡盛といった日本の蒸留酒、中国の白酒、世界辺境の蒸留酒など、世界中の製造現場を訪れて飲んでるんじゃないかという勢い。多様な原料のことや蒸留後のもろみの利用法など、周辺についてもさすがの博識。

土に穴を堀り、原料と「大曲」と呼ばれる酵母と麹が一体化したような固形物を加え、土をかぶせて固体のまま発酵させるという中国の固体発酵についての記述をいったい何冊で読んだろう。

ラルース酒事典 / ジャック&ベルナール・サレ、白川兼悦 監訳(柴田書店

元B&Fの松沢さんに教えてもらって、B&Fのカウンターからメルカリで買った「ラルース酒事典。酒類の種類ごとにその成り立ちや製法などを記した、260ページのまさに酒事典。事典のくせに著者のフランス人夫婦の好みがはっきりしすぎているのが最高で、フルーツ由来の蒸留酒に割かれたボリュームが極端に多く、気持ちも明らかに乗っている。

例えば「フルーツ・ブランデー(Eaux-de-vie de fruits」に関する記述は、酒を貴族にたとえれば、フルーツ・ブランデーは洗練された誇り高き貴婦人といったところであろう。~果実の精華であり、その芳香、風味、さらにはそれ以上のものが酒の中に大切に込められている。」から始まり、3ページにわたって解説が続く。

一方、モルト・ウィスキー」については、乾燥した麦芽(モルト)を糖化して発酵させたものを蒸溜機(ポットスチル)で二度蒸留したものである。」と、あまりにそっけない。

30年以上前に発行された本ながら、類書がないこともあって今でも大いに役に立つ。

Hennessy: A Toast to the World’s Preeminent Spirit / Glenn O’Brien (Rizzoli)】

1765年にフランスで設立されたコニャックメーカー、ヘネシー社の250年(!)の歴史を辿る美しい本。著者は「HOW TO BE A MAN」のグレン・オブライエン、イラストはジャン=フィリップ・デロームという最強コンビ。製法などという泥臭い野暮は最小限で、コニャック地方の素晴らしさ、歴代の洒落っ気満載の広告たち、要人やセレブリティに愛された歴史、華麗なるヘネシー一族の遍歴などが、洒脱なイラストや写真と共に綴られる。ヘネシーという夢の世界を作り、時代に合わせてブランドを発展させていった奇跡の軌跡。優雅極まりないこの本がまたブランド力向上に寄与しているというね。

Distilling Fruit Brandy / Josef Pischl (Shiffer)】
The artisan’s guide to Crafting Distilled Spirits / Bettina Malle & Helge Schmickl (Spiekhorn)】

蒸留の実務に役に立つ本は僕が知る限りはおそらく2冊。どちらも原書はドイツ語で英語に翻訳されたもの。

いつもは必要なところをザッと読んでるのだけど、どうしても都合いい部分だけ読んでわかった気になってしまうので、時間を見つけてはしっかり翻訳してみたいと思っている。スペースがまだあるので、いくつかポイントを絞って翻訳してみます。

蒸留の間、何が起こっているのか」
Distilling Fruit Brandy P.91-)

▼液体化した成分

蒸留前のもろみには、次のような存在物は存在することが確認されています: 水、エタノール、メタノール、酢酸、アセテート、フーゼル油、アセトアルデヒド、シアン化水素(主に核果類から、香り成分(約70種、エステル等・・。液体化したこれらの成分は、蒸留によって分離することが可能です。連続式蒸留機を使っている場合は、その分離は一回の蒸留で行えます。

▼液体化していない成分

繊維や塩分、酸など。固体または溶けてしまった果物の成分は、残留物をして蒸留器のポットに残ります。

▼蒸留の基本

水とアルコール、それが発酵したもろみの基本要素で、二つはそれぞれ沸点が異なります。水は100℃、アルコールは78.3℃。もろみを熱すると、徐々に蒸気に変わります。しかしアルコールの方が沸点が低いため、アルコールの方がより先に蒸気になるのです。78.3℃まではそうで、温度がそれ以上になり、水の沸点に近づくにつれて、水蒸気が増えていきます。こうなったらこれ以上の蒸留は意味がありません。二回目の蒸留では特に。

留意したいのは、水とアルコールが蒸気になると同時に、他の含有物も蒸気に含まれること。低い温度では、アセテートやアセトアルデヒドが気化し、フーゼル油のような飲用アルコールよりも沸点が高い物質は、高温になるまで気化しません。

蒸留を複数回することで、これらの含有物を分離することが可能になります。望まない物質を取り去ることで、品質のいい蒸留物を得ることができます。正しい温度コントロールが、望まない物質を除く効果的な方法なのです。

▼蒸留時に水を加えるべきか

ときにはマッシュしたもろみを薄めるために水を加える必要があります。撹拌機のついていない一重壁の蒸留機では特に、焦げつくことを防ぐために水を加えてください。撹拌機が付いていて、オイルや水が外側にある二重壁の蒸留器であれば、そこまで水を加える必要はありません。水を加えすぎると蒸気をコントロールするのは難しくなります。

▼最初の蒸留(単式蒸留器の場合)

攪拌機の使用はマッシュの急速な加熱に役立ちます。 蒸留が順調に進行するまで攪拌機を作動させます。

70℃になったら、火を弱めます。その後の温度上昇はゆっくりになります。それはアルコールや芳香物質が抽出される時間になります。

最初の蒸留では、原料によりますが、蒸留したものは1/3~1/4程度の量、40~60%のアルコール度数になります。

20~30%になることもあり、それは元のもろみのアルコール度数、品質、加水量などにも依ります。

▼二度目の蒸留(仕上げの蒸留)

二度目の蒸留の目的は、アルコール度数を上げ、クリーンで良質の芳香成分を取り出すことです。ヘッド、ハート、テイルの分別蒸留によって達成されます。

▼蒸留のプロセス

加熱はできるかぎりゆっくり行います。それにより、様々な要素を取り出すことができます。経験則としては、最初の蒸留液は約一時間後に出てきます。 徐々に加熱することで、望まない物質(アセトアルデヒド、アセテート、メタノールなど)を最初に蒸気化することができます。急ぐことは最悪です。たとえいいもろみであっても、品質の良いブランデーはできません。ヘッド、ハート、テイルを分別することによって、 より洗練された蒸留物を取り出すことができます。

▼ヘッド

ゆっくりと加熱することで、揮発性の成分が先に蒸留されます。急速に加熱してしまうとヘッドに飲用可のエタノールや芳香成分が含まれます。特にりんごはそうです。これらは本来はハートに属するものです。

▼ヘッドのテイスティング

ヘッドには揮発成分が含まれます。香りは刺激が強く、接着剤臭もします。味はトゲトゲしています。初心者は経験者の指示でテイスティングを行います。

▼ヘッドの利用

ヘッドは他の蒸留物とは別に保管し、次の蒸留に加えたりなどしてはいけません。単に望まない成分を加えることにしかなりません。それを分離することは困難です。ヘッドはハーブローションに混ぜ傷薬などに使うことができます。

次はいよいよハートですが、スペースの都合でまた後日。