mitosaya薬草園蒸留所

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5月
ちょっとした夢を見るのは
いつだっていいこと

May 2018

GW に房総で何かやろうというのがそもそもの間違いだった。

5月4日、クラウドファンディングの「植樹から蒸留まで」コース支援者のための植樹会を行った。用意したのはプラム2種(貴陽と太陽、洋梨(ラ・フランス、アプリコット(信州大実、エルダー(サンブカス・ブラックタワー)の5種。

植物ならこの人、の井上隆太郎に頼んでサイズも2m近くあり枝ぶりのいい苗木を探してもらった。支援者には品種を事前に指定してもらったので、名前を入れた植物プレートも作りたい。自分たちで植樹をした果樹に囲まれて、みんなでご飯を食べられたら素敵だろう。なにせ20万円の高額支援者だ。料理はchiobenにお願いした。前日から来てくれた彼女達は、早朝から勝浦の朝市に買い出しに行き、mitosaya内のハーブやエディブルフラワーを採り、本格的なコースを準備してくれている。

写真:中村俵太

しかし、当日、アクアラインの渋滞で皆さん軒並み到着出来ないという事態に。真っ赤に染まった渋滞情報をチェックしながらジリジリと待っていると、最初に到着したのはまさかの電車を乗り継いできた僕の母親(クラウドファンディング支援者なのです。母は目ざとく一番枝ぶりのいいプラムを選ぶと、これまた何箇所か空けておいた植樹用の穴から一番いい場所を選んだ。苗木を穴の中心に置き、培養土に堆肥や赤土を加えた土をかぶせて、棒で周りを強く押して固める。たっぷりと水をやると、夏のような強い日差しにぬれたプラムの葉がキラキラと反射する。一番いい場所に一番いいプラムが植えられて母も満足そうだ。

写真:永沼敦子

やがてポツポツとやってきた支援者の皆さんと、順に植樹をしていく。結婚25周年の記念に申し込んだ、というご家族もいて、これは枯らせないぞと隆太郎と顔を見合わせる。

植樹の後は取材に来てくれていた雑誌「家族」のチームにも、今月末から鹿児島の味噌屋の女将になるという写真家の永沼さんにも参加してもらい、皆でランチ。chiobenの料理も素晴らしく、興に乗った母が吹きはじめたオカリナも風にとけて、いい一日になった。


この木が実を付けるのは何年後だろう。さらにその実からブランデーが作れるのはいったいいつになるだろうか。なかなか出来ないなって思われるのではなく、一緒に大きくなっていく様を楽しんでもらえるような交流を長く続けていきたい。

鴨川に曽我部さんという面白い人がいるから紹介したいと隆太郎から前から言われていた。聞けばその男、仕事を辞め山林を購入し自分で家を建てているという。そこまではままある。奥さんの理解が大事なやつだ。しかし彼がすごいのは、敷地の杉を切り倒し、製材するところから自分でやっているところ。

家を建て始めて一年経ったという頃に会ったが、未だできているのは杉材を貼ったデッキとおがくずトイレと五右衛門風呂のみ。運動会で使うようなテントをデッキの上に張って、満足げにその男は笑っていた。

その曽我部さんから案内をもらって、今度養蜂をはじめるので一緒に勉強しないかと言う。

蜂の家の前に自分の家を作ったほうがいいのではとも思うが、面白そうなので参加することにした。講師は勝浦市で養蜂業を営む、中林養蜂の中林さん。彼は彼で「なんでこんな楽しいことをみんながやらないかわからない」と語る養蜂家のインタビューをテレビで見たことをふいに思い出して、養蜂家になったという。

そんな楽天家たちの養蜂講座は、ミツバチたちと共存しつつも依存しない気持ちのいいものだった。ミツバチの習性を知る座学からはじまり、山を歩き蜜源となる木を教えてもらったり、巣箱を置くのに適した場所探しをしたり(適度に日があたり風通りのいい場所がいい。人間と同じだ。午後は実際に巣箱を開けてみて、女王蜂、働き蜂、オスバチの違いを教えてもらい、女王蜂が生まれそうな兆候である王台(巣が下に膨らみ盛り上がっている)を潰すこともやってみた。

面白いと思ったのは、女王蜂という種類の蜂がいるわけではなく、同じミツバチながら食べるもの、育てられ方の違いで女王蜂になるということ。民意(蜂意)で選出された一匹の蜂を皆で支え女王蜂にしていくのだ。だから新しく女王蜂が生まれることもあるし、そうすると巣箱の中グループが分裂してしまい、共生できなくなってしまう。そこで生まれる前に兆候を見つけて分裂しないようにする。社会だ。

mitosayaにもミツバチたちがやってきて、敷地内を飛び回り、花を受粉させ果樹達がたわわに実をつける様子を想像しながら帰路につく。しかし短パンで参加したのは失敗だった。

今日から4日間、朝6時に家を出て約1時間のドライブ、市原にある技能講習所にフォークリフトの運転免許を取るために通う。なにせこれから重いものをたくさん運ぶのだから。

生徒は全部で20名で、初日は8時間の学科。寝たら最後と言い聞かせながらなんとか正気を保つ。先生も心得たもので、ここがテストに出るから線を引いて、ここにマルをつけてと懇切丁寧。おかげで無事に全員学科をクリア。

翌日からは10人づつのグループに分かれ、実技講習に移る。実技が始まってすぐに気づいたのだが、全くの初心者は僕しかいない。他の受講者はたいていは工場などに勤めていて、毎日フォークリフトに乗っていて、だいぶ上手になったしそろそろ免許取ってこい」なんて上司から言われてきているのだ(途中から想像。だから皆、すっかり慣れた感じで運転している。昔読んだ西川美和のエッセイに、映画の役のために、松たか子とフォークリフトの教習所に通った話があって、密かにそんな出会いに期待していたのだけど、当然そんなことはなく、歳下の強面のお兄ちゃんたちに囲まれ、誰よりも下手なおじさんが一人。

ハンドルを左手で操作することと、ステアリングが後輪にあることで、文字通り右往左往する。講習が進んでフォークを動かす右手のレバー操作が加わってくると、いよいよ混乱の極み。真っ黒に日焼けした鬼教官から容赦ない激を浴び、こんなに罵倒されたの久しぶりと感慨にふける、わけもなくただただ辛い。そんな講習が朝8時から(3日目からは鬼教官から朝練を命じられ7時から、17時まで続いた。

唯一の救いはお兄ちゃんたちがみんな優しく声をかけてくれること(大丈夫っすよ、楽勝っすよ。あとは教習所のすぐ裏に「西海岸」という超巨大な古着屋があって、そこに昼休みに通うのがいい息抜きになった。体育館ほどある場所にアイテムごとにラックが整然と並んでいて、Tシャツだけで5メートルほどのラインが8本ほどあるからとても昼休みだけじゃ見きれない。今日はここまで、と決めて毎日ちょっとづつ見ていくのだがそれが楽しい。

アロハシャツを買い、よくわからないメッセージの書かれたT シャツを何枚も買う。一期一会の宝探しのような古着屋の歓びを久しぶりに満喫した。

しかし今はインターネットがある。帰宅後ふと、購入したTシャツの胸の「SISTERS ARE FOREVER」の文字を検索すると、飲酒運転の車にはねられ妹を亡くした女性が立ち上げた、飲酒運転撲滅を呼びかける団体のサイトが表示された。

同じTシャツを着て肩を組む集合写真も載っている。彼らの中にこのTシャツの持ち主がいるかもしれない。

古着屋のTシャツに持ち主がいるなんて考えたこともなかった。ちょっとゾクっとする面白い体験。540 円。

そして、フォークリフトの卒業試験は、西海岸」で買った真っ赤なつなぎのおかげか無事合格。これで何でも運べます。

アイルランドの友人からメールが届く。売れっ子イラストレーターの彼は様々な会社とも仕事をしている。今はとあるメーカーとグラスを作っているという。

ありがたいことに何か一緒にやりたいと言ってくれた。

グラスに合わせたオリジナルの蒸留酒を作って、アイルランドと東京でリリースパーティをやって、もちろんmitosayaでも何かイベントが出来たらいいね。秋に間に合うといいけど」そんな話をつらつら書いた後、最後にこう締めてあった。

It is always good to dream a little.ちょっとした夢を見るのはいつだっていいこと。

そうそう。今のところ夢と借金しかない。

写真:中村俵太