mitosaya薬草園蒸留所

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3月
一年経ったら

March 2019

去年の春、スペルト小麦の粒を土に蒔いてみた。広いようで使っていないところはほとんどないmitosayaの敷地。物置前に硬い地面を見つけスコップで掘り返し、なんとなく畝を作ってそこにパラパラ。しばらくしたら芽が出てきたので、麦踏みだなんて言って、調子に乗って毎日踏んでいたら、あろうことか枯れてしまった。

以来、雑草伸び放題の荒れ地と化してしまい、見て見ぬふりをしていた場所だったのだけど、冬になって他の草も枯れて、春になったらいつの間にかまたスペルト小麦が伸びてきていた。

麦踏みしなかったのがよかったのか、一年経った麦がすくすくと成長しすでに穂がついている。

去年のGWはフルーツの苗木を植樹した。クラウドファンディングで植樹コースを支援してもらった人たちに、プラム、洋梨、アプリコット、ゴールデンオレンジ(湘南ゴールド、エルダーフラワーなどから選んで植えてもらった。

こちらはいい苗、いい場所、いい土を選んで植えたから間違いないはず。のはずが、夏の暑さ、冬の寒さが応えたのか、どうも調子がよくない。しかしこちらも春になるにつれて、どんどん新しい葉がでてきた。一年経ってやっと報告ができる。

去年の秋にmitosayaで結婚式を挙げたカップルが記念に植えた、小さな桃の木に小さな桃の実がなっている。

どうやら植物にとっての一年は上に向かっていく螺旋の一回転分のようだ。

Stählemühleにいた時、もっと長く居て勉強を続けさせてほしい」とクリストフに頼んだことがある。

彼の答えは、それよりも早く日本に帰って自分の蒸留所を作った方がいい、その方がずっとためになるから」という答えだったが、その後ぼそりと、自分もいつまでStählemühleをやるかわからないから、とつぶやいた。

それ以来彼の動向は気にしてはいたものの、こっちもばたばたと忙しくて、あまりフォローもできていなかった。

2018年末で彼がStählemühleを閉じた。ラマや羊を何十頭も飼うのも、プラムの畑を作るのも、蒸留酒を作るのも、おそらく彼にとってはドイツの田舎で家族で暮らすのに必要なことだったのだろう。どんどん忙しくなって、自分が思い浮かべていた姿と乖離していったのかなと想像する。やめてどうするのか聞いたら「家族仲をまずは修復して・・」なんて言っていたけれど、彼のことだからきっとまた何か考えているのに違いない。

mitosayaにインターンがやって来た。

クロアチアからやってきたルカとアニャ。彼らはクロアチア南部のプレモントゥーラという町で自分の蒸留所を作る計画を立てている。クロアチアにはラキアという伝統的な蒸留酒もあるし、いい蒸留所もたくさんあると思うのだけど、それでもmitosayaで働いてみたいのだという。教えるというよりも、日々はじめてのことが起こってそれに対応することばかりだと伝えても、これからスタートする自分たちにとってまさにそれが必要なことだと譲らない。

僕自身、Stählemühleで働かせてもらったことが、大きな経験と財産になっている。その恩を返す番かなと受け入れてみた。こうしてmitosayaの敷地内の東屋に住み込みで働く、彼らの3週間のインターン生活がはじまった。

結果からいうととても面白かった。

今日やることを、その意図を説明する。曖昧なことを言えるほど英語力があるわけではないので、理由込で明快に説明できなくてはならない。自分ひとりで目についたことをとにかくやっていくというやり方とは違って、人にやってもらうためには、作業の流れや効率も考えないといけない。いかに自分が適当にやっていたかを痛感させられる。

それだけではない。彼らに教えられることもたくさんあった。

今まで船の電気工事関係の仕事をやっていたというルカには、ちょっとした電気工事や設備の整備もできる。料理の好きなアニャは半分ほどの日は晩ごはんを作ってくれた。同じ食材でもヨーグルトや唐辛子の使い方でバルカン半島な味になる。ピッツァなんてフォカッチャの上に具材が乗ったような厚さとサイズ感で、なんとも不思議で美味しい。

何よりも全てにいきいきと取り組んでくれることがうれしい。

ちょうど彼らのいる時期と、ケータリングを頼まれていた時期と重なって、東京カクテル7デイズ、表参道ヒルズのmarniのオープニングなど、様々な場所に一緒に出かけてカクテルを作った。

結局3週間の滞在中に蒸留機を動かしたのはほんの数日。収穫や加工、瓶詰めや箱詰め。そして出張。毎日たくさんのやることがあって、たいていは予定通り進んでいかない。

彼らはどんな感想を持っただろうか。今年中にはオープンしたいという彼らの蒸留所を訪れる日が今から楽しみだ。

一年前にmitosayaに住み着いた二匹の子猫もすっかり大きくなった。見た目はすっかり大人だけどまだ子供の歳なのだろうから、とかげやカマキリを捕まえては、動かなくなるまで引っかいて遊んでいる。最近ではそれが大型化してきていて、朝起きたら部屋中に鳥の羽が飛び散っていたときは参ってしまった。さらに一年経ったらどうなってしまうんだろう。考えるだけで恐ろしい。

しかし、近くにいてつい見過ごしてしまうけれど、一年で一番成長しているのは、子どもたちかもしれない。将来の夢は? という宿題に「夢はガーデナーになることです」って書いていたの見逃してないよ。

僕も負けずに蒸留家の道を追求していきます。