mitosaya薬草園蒸留所

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1月
今日の瓶瓶物語

January 2019

元々は薬草園だったmitosayaは、誰かが住む場所でもなかったためか、かといって工場のような事業所でもないためか、ごみ収集が来てくれない。

できる限りゴミを出さない&再利用することを心がけてはいるものの、やっぱりゴミは出てしまう。たまったゴミをバンに積み込み、2ヶ月に一度くらい、町営の環境センターという処理施設に持ち込むことになる。到着するとまず受付で車の重さを量る。場内ではゴミの種類ごとに場所が決まっていて、車で回りながら自分でそれぞれの場所に捨てていく。帰りにもう一度車の重さを量り、捨てた量に対してお金を払う。ただし、紙やペットボトル、ガラス瓶やアルミ缶などのリサイクルできるものは無料だ。

リサイクルだから問題ないかといえば、さらに分別したり潰したり、処理業者が引き取るという作業を見ていると、そう話は簡単ではないなと思う。色別に分けられうず高く積まれたガラス瓶を見つつ、自分がここに捨てられるようなものを作るのが本当に必要なことなのか、と毎回考えてしまう。

mitosayaの瓶について真っ先に思ったのは再利用できるものにしたいということだった。当初はリターナブルびん(リユースびん)が使えたらいいと思っていた。ビールや日本酒、焼酎などで使われている再利用される瓶で、ガラスの牛乳瓶などもそうだ。同じ瓶を会社を横断して再利用するというのも古くて新しい。形に目が向かないから他に注力できる気もする。

リターナブルびんというのはどこで買えるんだろうと、ガラスびん3R促進協議会なる団体に問い合わせをしてみると、リターナブルびんを使うには、自社で回収も行い、洗浄などの再利用するためのの仕組みまで用意する必要があり、ただ瓶を買えばいいということではないそうだ。

では他のガラス瓶ではダメかというと、ほとんどのガラス瓶は回収された後砕かれ、カレットと呼ばれるものになる。けい砂(海の砂)や石灰石などにそのカレットを加え、熱を加え溶解し新しいびんを作る。新しく作られる瓶にカレットが使われる割合はほぼ100%。ガラス瓶の存在自体にリサイクルする仕組みが備わっているのだ。

それならばいいのかも、と瓶会社の製品から探し始めた。たいていの瓶会社はオンラインで製品カタログが見られるようになっているが、どうにも普通だ。世の中にはこんなにたくさんの瓶があるのに、製品になるとバリエーションがないのはなぜだろう。

一社だけカタログが僕の環境では見ることができない会社があって、問い合わせをしてみた。会社の名前もちょっと変わっている。

数日後、岐阜県の日本耐酸壜工業株式会社という瓶メーカーから返事が来た。


現在、弊社では蒸留酒用びんのデザイン開発をしております。

ちょうど先日、デザインのたたき台としてMonkey47と、スティーレミューレのびんを参考に図面を描いたところです。

御社ホームページを拝見したところ、御社で蒸留酒を作られるとのことですし、スティーレミューレで修行したとの記事もありましたので、デザイン開発に御社からもアイデアが頂ければと考えております。

なんという偶然。なんというタイミング。渡りに船と東京に来るタイミングで打ち合わせをすることになった。

担当の浅野さんは、瓶について何も知らない僕たちに、レクチャーをしてくれた。

● 新しい瓶を作るには金型を作る必要がある。工場では一度に10個以上の金型をセットして使うため、新規の瓶で作る金型代は数百万円~一千万円程度かかる。

● 工場では常に炉を稼働しているので一度動かしたら最低でも一日は作り続ける必要がある。よって数万~数十万個が最低ロットになる。

● 市販の飲料やお酒の瓶はたいていは、とめ型と呼ばれるオリジナルの型で、気に入ったものがあっても他社が使うことは難しい。

● 瓶の製造ラインはガラスの原料ごとに分けられているため、他の色を使うことは難しい。今回選択できるのは透明色。主に健康ドリンク用の瓶の製造に使われるアンバー色のラインは製造量も多い。

と、オリジナルを作るとてつもないハードルの高さを理解する。しかし、この後浅野さんは言った。

今回は新規製造にかかる金型代などは負担しますので一緒にオリジナルを作りませんか。最低ロットもある程度仕入れてもらえれば大丈夫です。ただし、できたものは一般にも販売させていただきます」と。

こちらとしては、好きな形が作れて数量的にもそこまで負担しなくていいという願ってもみない提案。一般発売されるというのも、むしろ広まるきっかけにもなり好都合だ。

こうしてはじまった瓶づくりだが、これからが大変だった。

まずはこちらからデザイン案を出すことになる。なんとなく好きと思うものはあるけれど形にするのは難しい。mitosayaチームでああでもないこうでもないと話をする。なにかきっかけが欲しいというときに思い出したのは、打ち合わせのときにガラス棚の奥にほこりをかぶっていた耐酸瓶のミニチュア型だった。

日本耐酸壜工業の社名の由来になった耐酸瓶とは、文字通り酸に強いガラスの特製を利用して作られたガラス瓶。昭和初期、主に酢酸を入れるために作られ、籐の籠に入れて破損を防いだという。現在はポリタンクやタンクローリーに役割が取って代わられ作られていない。耐酸瓶のずんぐりした丸い形から線を引き、丸型と角型の2つを考えてみた。容量は350ml。ずんどうでぼってりした形がユーモラスだ。 mitosayaのセラーで使っているボンボンヌと呼ばれるガラス容器にもどこか似ているのも面白い。

その線を元に、浅野さんの方で製造ラインに乗るような図面にしてもらう。すっかりそれっぽくなった図面を見て、もう出来たかのように盛り上がる。

しかし、これを3Dモデリングした画像を見てちょっと不安になった。自分でスチレンボードを削って作ってみて理解した。

これ、持ちづらいぞ。

置いて眺めるにはいいけれど、これに液体が入って注ぐために片手で持つと考えたら太すぎる。

しかしこれを細くして、縦に伸ばしていくと、どこかで見たような形になってしまう。

そこで丸型を一旦捨てて、角型のみで考えていくことにした。耐酸瓶やコンプラ瓶のようなストーリーについ寄りかかりたくなるが、純粋に好きな形を突き詰めていくことにした。香水瓶のように入っているものがより魅力的に見えるよう、角の落とし方、肩のカーブや口の長さを工夫する。

そうして出来たのがこの形だ。容量も500mlにした。これは100mlのサイズを別に用意することで、大小をはっきりさせようという意図だ。

このあとは実際のサンプル作成。3Dプリンターで作ることもできるが、透明じゃないとイメージを取り違えるとのことで実際にガラスで作ってもらう。

また、今回はVinolokというチェコで作られているガラス製の栓との組み合わせもポイントで、通常は専用の瓶とセットで使うことが求められるVinolokを、この型では使えるようにしてもらった。ところが、瓶の内側というのは型があるわけではなく、空気を吹き入れる強さとその冷却具合を調整することで、内側の形状をコントロールするのだという。

最初のサンプルではその栓との勘合がうまくいかずに、微調整の後、再度作ってもらう。

そして本日、本生産が行われた。

岐阜県大垣の郊外にある日本耐酸壜工業の工場では、すでに作業が始まっている。炉の温度は1700度にもなるという工場内は強烈に暑く、また機械の動く音で会話もままならない。

炉から出てきたトッポギのような真っ赤な液状化したガラスが目にも留まらぬ速さで、ラインへと送られていく。ブロー&ブローと呼ばれる成型工程を経て、8つのラインから、2本づつ、何度も線を引き、スチレンボードで形を検証したあの角型の瓶が飛び出してくる。

真っ赤な瓶がコンベアーで送られる頃にはあっというオレンジ色が薄くなり、透明の瓶へと姿を変える。魔法のようだ。

このあと歪みのないように温度調整しながら冷却し、コーティング、検査、出荷という流れになるという。

今回メールを見直してみたらこのプロジェクト、気づけば一年以上かかっている。次はラベルと箱です。